2011年01月24日

行き当たりバッチリ/旅に出た友のこと


おみちゃん、という友人がいる。
知り合って5年ほどだろうか。パーカッションをやるミュージシャン。キャラバンの後でずっと叩いていたり、ケイソンの盟友でもある。ギターを弾いて唄うオレも、たびたび一緒にプレイする。

40過ぎるとなかなか友達が出来なくなる。出会う人のほとんどは仕事つながりだし、ビジネスで出会うと仲良くはなっても、(たとえば高校時代の友達のような)遠慮無しに何でも言い合える友達みたいな間柄には、なかなかなり難い。おみちゃんは40過ぎて出逢った数少ない友達の一人だ。2つ年下。
静岡生まれのサーファー。俺は波乗りしないけど、まわりにはサーファーがたくさんいて、おみちゃんの話を聞くだけでも、彼の波乗りへの愛を感じる。俺は根っからのスキーヤーだから、「自然を相手に滑る快感」という意味で、遠からずその意味が分かるのだ。
冬しか滑れず、Tシャツにサンダルでは凍えてしまうスキーヤーというのは、サーファーほど「LIFE」にはなり辛いのだが。

1年ほど前だろうか。

おみちゃんは波にもまれて頚椎を骨折した。
詳しくは書かないが当初全身不随で、手術を経て医者も驚くような回復を見せた。「最低車椅子は覚悟してください」って、目しか動かない状態で言われたんだけどね。ラッキーだよ。そういっておみちゃんは笑った。
運がいいね。いや、運のいいやつは首折ったりしないか。そういって二人で大笑いした。
手術とリハビリを経てウチに遊びに来たおみちゃんは、すこぶる元気そうだった。ハグは以前と変わらず力強く、「握力は19しかないけどね。でも太鼓は前よりいいよ。ドラムも毎日練習してる。よくスティック飛んじゃうけどね」と笑った。

ちょっと真剣な表情で、おみちゃんが言い出した。
「しんさん俺ね、旅に出ようと思うんだよ」
「いいねぇ。どこへ?」
「シベリア鉄道でヨーロッパ行って、アムス行ってスペインからモロッコに渡って、西アフリカまで」
聞けばたまたま義理で入った傷害保険が降りて、何がしかまとまったカネを受け取ったらしい。
そういえばおみちゃんは昔も、大きな交通事故で示談金をもらい、そのカネを握り締めてサーファーの友達と二人、一年近く世界を波乗り放浪したことがある。「文無しで帰ってきたら空港で兄さんが待っていてさ。こっぴどく怒られたよ」なんて言ってたっけ。
……運がいい男、というべきだろうか。

「そりゃいいじゃん。最高じゃん。いいなあ、オレもいつか行きたいんだよね。シベリア横断でヨーロッパへ。俺は絶対バイクだな」
根っからのバイク乗りである俺は言った。そしたらおみちゃんの顔がちょっと変わった。
「え、なに? バイクって。バイクで行けるの?」
「楽勝でしょ。富山あたりからウラジオストックまでフェリーで行って、そっからシベリア横断鉄道に沿ってひた走ればヨーロッパっしょ。何年か前に行った編集部の後輩が、道路がモスクワから東にどんどん整備されてるって言ってたよ。寄り道しなきゃ、ひと月くらいで十分なんじゃない」

「ええっマジで。しんさん俺バイクで行く。バイクで行きたい。どーすればいいの」

去年初夏の話である。


続く


shinikeda at 19:17|PermalinkComments(3)TrackBack(0) 旅する日々 

2010年11月22日

ユニクロのアンパン。

ユニクロ、愛用してますか?
我が家にもユニクロ製品が少なからずある。価格と品質、お洒落度や使い勝手のバランスがよく、家の近くに店があるから、年に何度か買い物する。ファンということもないが、ヒートテックを中心に妻のほうが利用率は高い。

そんな妻が土曜日の新聞チラシを見て言った。
「うわ、ヒートテックが990円だって。ちょっと行って買って来よう。ダウンもすごく安いよ。テレビで宣伝してるヤツ」
ちなみにダウンは5980円が3980円。チラシには創業記念祭と記されていた。確かに安い。
「伸もいる?」
「うーん、俺はいいかな」
妻は昼前に家を出て、ヒートテックを数枚買い込んできた。熟慮の末、ダウンは止めたらしい。

夕方にフラメンコのレッスンに出かけ、深夜帰宅した妻は言った。
「スタジオの近くにユニクロがあって、Aちゃんが『そういえば今日ユニクロ安売りだよ』って言い出したら、みんなで行こうってことになって。また行っちゃったよ。ダウンなんてもう黒しか残ってなくて、ヒートテックもサイズ切れ。でも店の人に聞いたら、『注文すればこの値段で取り寄せできます』だって。すごいサービスだよね」

たしかに。売り切れごめんはセールの鉄則。ユニクロの常識破りは顧客を惹きつける。



翌日は日曜。ネットサーフでこんな記事を見つけた。

「ユニクロの創業感謝祭アンパン行列」

創業感謝祭初日の土曜日、早朝から並んだ人のためにユニクロがアンパンと牛乳を配るサービスを行った。これは昨年に続くもので、大阪発信のこの記事では、深夜1時すぎから5時半にかけて、大阪のユニクロ16店舗を回って行列の様子をスナップ写真でレポートしていた。誰がどうして調査をしたのかは定かでないが、編集者としては興味深い取材である。

http://news.livedoor.com/article/detail/5153367/


この記事では
「どうやら4時くらいからみんな集まり初め、5時過ぎには行列が完成されているようです。未明の大きな行列も見応えがありましたが、なにより午前1時過ぎの段階から並び始める猛者たちが確認できたのは驚きでした」と結論付けている。ちなみに昨年は東京銀座店で2000名、大阪梅田店で700名の行列が出来たという。

……すごいね。

アンパン以外の早朝行列特典としては、1000円クーポンか靴下が当たるスクラッチカードを配るが、それ以外に開店前に並ばなければ買えないスペシャルがあるワケではないらしい。しかも妻が店員から聞いたように、売り切れたものでもバーゲン価格で取り寄せできる。ならば行列を作る意味ってナニ?

ひょっとしてやっぱ、アンパンすか。

上記ニュースサイトの写真では、早い時間から並ぶ店先に浮浪者っぽい雰囲気のおじさん数人が写っていたりして。どこかでうわさを聞きつけ、近くのダンボールハウスからやってきたのだろうか。だとしたら牛乳にアンパン、ちょっとしたご馳走。しかし実際に行列するほとんどは(
言うまでもなく)普通の人だ。

ある意味、レジャーなんだろうナ。
ユニクロのバーゲンに早朝から並んでアンパンと牛乳とスクラッチカードをゲットして、朝6時からお買い物。「眠いね」「寒かったね」「でもほら、何千円も安くこんなに買えたよ」「オマケにアンパンも!」。それも『休日の楽しい過ごしかた』ではあるだろう。不思議な国だなぁ。



リンク経由でユニクロのウエブサイトへ。そこには「6時開店対象店舗」のリストがあった。県名が赤字で並び、それをクリックすると県ごとの開催店舗が表示される。それを眺めていると、一つだけ黒文字が。つまりリンクのない県=6時開店アンパン配布を行わない、日本で唯一の県。さあどこでしょう? 答えは島根県。

へぇ。島根のヒトが特にアンパン嫌いなワケではないだろう。ちょっと疑問を感じて調べてみた。
まずは県ごとの店舗数。島根は3店。これは鳥取と並び、日本最少。でも鳥取は内2店が6時開店だった。
次いで4店が徳島、高知、佐賀。以下5店/山梨、福井、沖縄。6店/
滋賀、和歌山、香川、石川、秋田。7店/富山、岩手。8店/長崎、大分、山形……と続く。

ちなみに県別人口を少ない順にあげると、最も少ない
鳥取が60万。次いで島根74万、高知79万、徳島80万、福井82万、佐賀86万、山梨88万7。店舗数と人口はおよそ比例関係にある。
ユニクロの店舗数はつまり、日本の田舎度合いを示すバロメーターともいえる。つまり3店舗で6時開店セールを行わない唯一の県島根は、日本で最も田舎ということか。

蛇足ながら。

ユニクロ最多は東京(110店/人口1257万)。以下大阪(70/881万)、神奈川(60/879万)、愛知(50/725万)、千葉(46/605万)、埼玉(45/705万)、兵庫(38/559万)、北海道(29/562
万)、福岡(27/504万)と続く。



すごいなぁ、ユニクロ。
たとえば。値段も質も似たようなものが「ファッションセンターしまむら」に並んでいても、買わない。でもユニクロならちょっとお洒落。これがユニクロのうまさなんだよな。で、安いからちょくちょく買い物し、トータルでは結構な金額を払っている。このバランス感覚は、マーケティング分析とかブランド戦略とか、すべて計算ずくで生み出されたものなんだろう。社長の柳井さんはよほど切れる人だ。当たり前か。

ユニクロ的経営術が日本経済の救世主のように言われて久しい。と同時に、メイドインジャパンを壊滅させる先鋒という見方もある。これはきっと、どちらも正しい。

ユニクロに限らず、コンビニや大手ショッピングセンターの進出によって、個人商店はなすすべなく廃業に追い込まれ、日本全国の商店街がシャッター通りになっていく。
田舎で母親が小さな酒屋を営む友人は、「近くに出来た安売り量販店は、ウチの仕入れ値より安い」と笑った。
時代の流れだ、仕方ない。大量生産するのにコストで中国ににかなうワケが無い。そうして世界は限りなく、均一の色に染められていく。



バビロンシステム。

俺たちは本当に、幸せの方向に向かっているんだろうか。
知らぬ間にバビロンに組み込まれ、気づかぬうちに飼いならされてはいないか。

ときには立ち止まって考えてみなくてはならない。


shinikeda at 21:58|PermalinkComments(2)TrackBack(0) 日々雑感 

2010年11月20日

発売中。(絶賛?)



po1p

旅人による旅人のための旅マガジン
たびがく=旅学
僕が作っている雑誌です。

初めて発刊以来、気がつけば10年。
こういんやのごとし。
で、中でも特に思い入れの多い記事を再録して
初のベスト版を作りました。

やたらと大きかったこれまでの旅学から
大きくリニューアル。
A5サイズです。バッグにも入ります。


ページを開くと、息を呑む世界の瞬間があふれ出します。
胸を打つ言葉が迫ります。

たとえばこんな。
砂漠_edited-1

たとえばこんな。
汝の人生を

たとえばこんな。
あしあと

たとえばこんな。
goro大



全240ページ、内カラーグラビア200P 。
読み応えたっぷりです。
ぼろぼろになるまでめくってもらえれば本望。
1500円+税。
ぜひ買ってください。




たびがく ザ・ベスト



shinikeda at 18:15|PermalinkComments(2)TrackBack(0) 日々雑感 

2010年11月17日

ブータン

 ブータンには「エマダツィ」という料理がある。

特産の巨大な赤唐辛子と、牛の乳を発酵させたチーズを炒めたもので、炊いた米とともに大皿に盛り、家族で囲んで食する。これがブータン全国民の主食である。

「へぇ、ちょっと食べてみたい」と思う人も多いだろう。しかし5年ほど前、ヒマラヤ山脈南麓に位置するチベット仏教の国ブータンを旅した折、僕をガイドしたナムゲイ君はこともなげにこう言った。

「ブータン国民は、日に朝晩二食、365日これを食べます」

 ごく稀に肉料理も食べるが、そんなに好きじゃない。国王だって毎日エマダツィを食べていますよ、と胸を張る。つまりブータンで「食事」といえばエマダツィを意味し、この国に「晩御飯なんにする?」とか、「どっかでなんか食べようよ」とかいう会話は存在しないのだ。

 たとえば日本の着物に似た民族衣装の着用の義務化や、禁煙を法律で定めたり、観光客は一日200ドルという定額制(ガイドやクルマ、宿泊に食事を含む)であったり。2008年に選挙によって初の首相が選出されるまで、100年以上に渡って世襲王政を強いてきたブータンの国家運営は、(誤解を恐れず言えば)「独裁的」である。

 

 1972年、第4代ワンチュク国王は16才で即位する際、国内をくまなく歩き、こう提唱したという。

「わが国はすでに幸福である。西欧諸国のようにGNPを追うことなく、GNHを求める国となろう」

Gross National Happiness=国民総幸福量。GNP=国民総生産に対するアンチテーゼとして国王が掲げた国家指標。これを「綺麗事」と片付けるのはたやすいが、2005年に初めて行われた国勢調査では、45.2が「すごく幸せ」、51.6%が「幸せ」と答えている。

国民の96.8%が幸せを自覚する。独裁といえば不幸な共産主義の隣国が浮かぶが、「良王に率いられた独裁国家」ブータンでは、幸せが当たり前だった。

国民が満足に食べられない国は不幸であり、世界にそうした国は少なくない。しかし、すべての民に大家族で暮らす古い家と、腹を満たす質素な食があり、かつての日本のように誰もが着物をまとって仏に手を合わせるブータンの国民総幸福量は、世界有数のGNPを誇る我々の国よりはるかに高い。

 

しあわせはお金だけではない。それはもう知っている。ならば幸せとはなんだ?

旅はそのヒントに満ちている。

shinikeda at 17:35|PermalinkComments(2)TrackBack(0) 旅する日々 

2010年07月10日

インド、バラナシへ。

旅人による旅人のための旅マガジン「旅学」編集人であるオレは、ここ2年ほど、年の半分ほど海外を放浪するような生活が続きました。
今年4月でちょっと一段落。3ヶ月も日本にいるのはものすごく久しぶりで、ひたすら家に引きこもって原稿を書く日々を過ごしております。

明日から一週間ほどインドに出かけます。
バラナシへ。そこにはオレの部屋があるワケです!
オレは仲間たちとオンザロードというNPOをやっていて、日本人ボランティア延べ80人と共にバラナシに子どもたちが無料で通う学校を建てたのは3年前のこと。2階が宿になっていて、そこに泊まった旅人の宿泊代で学校が運営されるという「スクール&ロッヂ・プロジェクト」を営業中。
3月にEXILEのダンサーであるUSAと学校を訪れた様子を、先月NTVのニュースゼロが特集で流してくれたので、見た人もいるんじゃないでしょうか。

いきさつはコチラを↓
http://www.ontheroad.me/


バラナシのネットカフェからブログをアップしてみます。期待セヅ待タレヨ。


shinikeda at 01:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 旅する日々